甘くて冷たいそれは

開け放った窓からの風が部屋を吹き抜ける。

室内干しした洗濯物の横に腰を下ろし水道水で割ったカルピスをごくごく飲んだ。僅かに溶け始めた氷がカランと鳴って、窓の風鈴が呼応する様ちりんと揺れて、どこかの部屋のテレビから誰かの笑い声が届く。ああ、夏やなぁ。
京都の水道水が地元に比べて美味しくないのは自明なのだけど、やはりカルピス、こればかりはいつになっても原液を勢いよく流れ出す水で割ってしまう。
私の場合、コップを構えたらわざと目を瞑って栓をひねる。
白濁の液体が100均のガラスコップをひたひた満たしていくのを想像し、ここ!という処で水を止める。溜まる水のスピード、後で入れる氷の体積全てを考えながらぴったりのタイミングを狙い定めるあの瞬間、私は一流のカルピス使いと化すのだ。ひゅるりら〜(←カルピス使いの音楽)
無論濃くても薄くても駄目。途中で薄目を開けるなんて妥協は許さない。たった一杯に全身全霊を注ぎこんで、脳内カウントを始める。3、2、1。
目を開ける。絶妙な濃度の「本日のカルピス」が揺れる。くうっ、堪らないぜ、この幸せ、ひと口目の至福の甘さ。


半分溶けた最後の氷がカランと鳴る。
何をするでもなく網戸越しの雲を眺めながら、口に含んだそれをシャリと噛む。