涙ぐむ

4限のゼミ発表。集中砲火もいいところ、こてんぱんに叩きのめされ蹴り飛ばされて冷たく場外宣告されたのには、さすがに参った。
質疑応答の間、ぜったい泣くもんかと腹に力を込め笑みと思しき表情を顔に貼り付けて、容赦のない、傷口をぐちゅりと抉るような教授の猛攻に応えていたのだけれど、チャイムの後苦笑するTAのイシダさんに慰めの言葉を頂いた瞬間、水面張力は敢え無く決壊、しょっぱいものが一粒、ひとつぶだけぽろりと零れてしまった。


「結論の後にだからどうしたの?なんて言われたら私」
「まあねぇ、今までの中では一番持ち堪えた敗退だったんでない?」
「……」


「でもさぁ言ってる事正しいかも知れんけど、先生ももう少し言い方ってもんがあるやんねぇ」
腕組みする彼女の言葉に、思わず大きく頷きそうになったものの、寸前で思い留まる。とても共感するけれども、今日の私にそれを愚痴る権利はないのだ。
言葉がキツかろうが酷い事を言われようが、あの場で反論出来なかったのはひとえに私の発表内容に甘えた妥協があったから。
自分の努力不足は、自分が一番解っている。
そこから目を背けて他人の悪口で発散するのは楽で容易だけど、でもそうでなく、次こそは勝ぁつ!と人知れず闘志を燃やし努力する方が格好良いんだもんっ、と続いて零れ落ちそうになる涙を、自ら頬をつねる事でひっこめた。こんなの、傍から見たら只の馬鹿である。