傘を開いて嵐のような風に乗り

風の強い日はメアリー・ポピンズの真似をして遊んだ。
北町の彼女と南町の私。街道沿いの正反対に家を持つ私たちは、小学生に相応しい安っぽい傘をくるくる回しながら後ろ向きに進み、次第に遠く離れていく相手の姿を見遣りながら、30分後に公民館、30分後に公民館、と頭の中で唱えて歩く。互いの家のちょうど間に位置する公民館には、当時家に一冊もなかったマンガ(住民より寄付された年代もの)(たまにえっちなのも見つけた)(えっちって言ってもキス程度だけど)がそれなりにあったから、ちょっとした不良気分を楽しみながら長時間を過ごすにはぴったりな場所だった。今で言う漫喫感覚で使っていたけれど、今思えばもの凄く健全な遊び方だ。だって「公民館」。なんて子達だ。
あれから10年経った今も、彼女の家の電話番号は勿論、離れのおばあちゃん宅のそれまできっちり言える。
何だかふと、そんな事を記しておきたくなったのだった。
(物忘れ防止策ではない)