そんな一場面

3連休初日、名古屋から京都に友人ゆうがやって来た。彼女とは小・中・高と続く腐れ縁。

京都駅の三省堂で互いを発見後、さむいねーさむいわーなどと言い合いながら、取り敢えず「任せるぜ」というので「おう任せろ」と電車に乗って紅葉も最盛期の東福寺へ。
しっかし東福寺駅に降り立った頃から不穏な気配はしていたのだ。まさかねーと甘く見てへらへらしていたのがそもそもの間違いだった。いざ境内に入ろうとするも、人混みの為、入れず。「はーははは!人がゴミのようだぁ!!」と馴染みの台詞で詰ってやりたかったけれど、隣に並ぶ(人ゴミに埋もれる)団体ツアーな奥様方の視線があまりに恐ろしかったので諦める。ええ、まあ、お金払ってツアーに参加して、見えるのが人の頭だけっていうのは、確かに少しお気の毒ですよね。苛々しちゃいますよね。わかります。
その後やっとの思いで中門をくぐったものの、ひと目見た境内の状況に思わず噴き出す。何しろ、白い玉砂利の境内にうねうねとディズニーランドもびっくりの列を成す人人人。思わずファストパスを探してしまった。
ゆ「すごいなぁ…」
私「うん、すごいわ…」
ここまで来たらいっそもう開き直って笑うしかなくて、取り敢えず二人でぱちぱち写真を撮りあう(列に並ぶ人々の)。しかし、列に並んでいる内に気付いたのだが、こうして並ぶ事で自然と境内中を隈なく見物出来るという具合で(境内全体を列がうねうねしているから)、少し得した気分になる。
アラッ、あなた見てよ。あの屋根の裏の縦の木目の色、大層渋いわね。などとツウ的な感想を言い合うことで自己満足も得られ、私はとても満たされた気持ちになった。

延々と連なる人の群れの中、二人でふたえの話をした。
私「これはふたえと違うんだ、皺だ」
ゆ「昔はもっと…なんというか…」
私「ひとえでしょ」
ゆ「うん、まあ、そんな感じ」
にこにこ動画の話もした。
ゆ「あたし実は3月には」
私「ええ、まじで!」
ゆ「うん、解禁される前から待ってた」
話題を選ばなくて良い、というのは実に気楽なものだ。
こんな長い列、本当ならどちらかが不機嫌になっても良さそうなものなのに、何故かすんなりと並びきってしまえた。偉いな、私たち。まだまだ若いよ(私信)。
そして遂に、列の先頭へ。待ちに待った通天橋である。
まず橋の端で一列に並んで座った無愛想なご婦人方に木槌で(木槌で!)豪快にボン!と「東福寺」の朱印を押してもらい、そのまま橋の中央へ。ある一角に人集りが出来ており、其処がどうやら最も素敵な紅葉スポットらしい。垣間見えるは確かに見事な赤。
ゆ「写真撮ろ、写真!」
私「はい」
ゆ「ハイ、チーズ」
私「《確認中》…わたし、おでこしか写ってないの…」
ゆ「あ、じゃあほらもう一回!ね、ハイチーズ☆」
私「《確認中》…わたし、しなびて影になってるの……」
どうやら彼女のデジカメの人顔認識機能は、私の顔を顔と認識してくれないらしい。いくら写真嫌い(写るほう)を自称しているとはいえ、哀しいことだ。

そんなこんなで通天橋を抜け、傍の紅葉樹の元でひと通り撮影会を行った後、今度は開山堂へ。堂に続く階段廊下のこれまた屋根に貼られた「八右衛門」「安兵衛」といった名札に思いを馳せ、彼らの作品をネタに一頻り盛り上がる。くだらないが、くだらない事こそ大切にするという心がけを忘れてはならない。
開山堂へ着くと、その屋根には金色に輝く栗きんとん…?
私「あれ、栗きんとんじゃない?」
ゆ「ほんとや。栗きんとんや」
私「有り難い感じだね。でも何故あそこに?」
ゆ「は…!あれは、もしや、とうふく様では!?」
私「おおー、あれが守護神とうふく様!!」
ゆ「TOUHUKU様だTOUHUKU様だ」
私「TOUHUKU様だ。あんた早く写真撮りなよっ」
以上の意味不明な会話の後、ゆうは貴重なバッテリーを使ってとうふく様、もとい栗きんとん、もとい塔上部の金装飾を不必要なアップで写真に収めた。全くの無駄である。