読み記
- 作者: 中井英夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/15
- メディア: 文庫
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★★★☆☆
登場人物のキャラクター設定、ディティール描写、各所に散りばめられたキーワードに見られるセンスが、とても素敵。
〔私用読後メモ:以下ネタばれ注意〕
*
冒頭から、推理する立場にある人間の軽さ―ある種の傲慢さや所詮他人事という冷たさのようなものにずっと不快とも云える違和感があって、その人物は好きなのだけど、でも、なんか…という気分のまま、話の展開に集中出来なかった。あと、五色不動や藤木田氏のくだりは広げた大風呂敷をもう少しきゅっとたたんで欲しかったなという感想。その為「物語」を求めて読んだ者としての評価星はみっつ。
とはいえ、読者が感じるその違和感こそが中井英夫の狙いだったのであろうし、始終現実と非現実の「あわい」を漂っているかの様なストーリーの不安定さですら、それは確信犯的に創られたものだとすれば、やはりこの小説は凄い。
推理小説(或いは世の中に起こる様々な物事に纏わるあれこれ)を手にした自分が、如何にそれらを「まるで週刊誌を眺めるように」読んできたか、今後も変わらずそうやって消費していくか。決して説教を垂れる訳ではなく、小説の後半、著者は読者にその事実だけを淡々としかし容赦なく突きつける。それをされた読者は、それまで不快に思ったり嘲笑したりしていた奈々達の言動・行動に突然己の無意識を見出し、ドキリとするのだ。「彼らは私だ」と。
しかしそれでも変わらない世の中。相変わらず推理小説を消費する私。その推理小説が暮らしの糧となっていた中井英夫。どんな綺麗事を言ったって結局は他人の死を玩具にしている。眺めて暇を潰している。そしていつか自分も死ぬ。良いとか、悪いとかじゃない。
ただ、今そこに確かに存在する哀しみと厳しさを引き受ける覚悟を。
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うーん、本文に描き出されたお嬢さんのお召し物を想像していたら、買い物に行きたくなってしまった!(奈々村さんは一度たりともお洒落に手を抜かなかった)
丁度セールの時期だけれど、お財布の中身と時間との相談が必要…