しをんもお薦め

これまで手をつけていなかった中井英夫作品、手始めに『虚無への供物』から読んでみる。三浦しをん氏はじめ、推理小説の書き手を中心に数々の作家や評論家が賛美するこの作品は、意外にも(?)バレエ用語が散らばる1頁から始まっていて、一応3歳から10年程クラシックバレエを続けていた私はそこで一気に惹き込まれてしまう。
バレエの他にもゲイバア、アイヌ、宝石商、不動明王などなど、思わずうわぁぁと感嘆の呻きをあげざるを得ないキーワードの数々、かと思えばアリス(アリス!まさかこんな所で)やポウ、乱歩などの世界が小説の中で突如色彩を帯びたりして、ピンポイントに私のツボを刺激する本書の展開に、堪らない思い。
持ち合わせが無くて、買ったのは講談社文庫(分冊された新装版)の上巻のみだったのだけれど、こんな生殺し状態になるのなら、いっそATMで下ろしてでも一緒に手に入れておくんだった!と、時計と睨めっこしながら本屋の閉店時刻を思い起こし、唇を噛んでいる次第です。