徘徊のひと

しっとりとした大気に、排気ガスの匂いが溶けている。
ふらりと立ち寄った書店で久々にコミック平台を眺め、今月の新刊の充実っぷりに慄く。ちはや乙嫁センネン聖おにいさんアポロン百鬼夜行抄、……もう、うちには置き場が無いのに。お金も無いのに。切実な問題である。
膨れ上がる欲望を制し、幾つかは週明けに社割で買う事にして、取り敢えずアポロンとちはやを手に入れた。

店を出て直ぐの道路を、スーツ姿の男性が二人、肩を組み唄いながら楽しげに横切っていった。金曜の夜だもんな。嬉しくなっちゃうよな。ねえ色々あるけど頑張ってるあなた、私が今の会社を辞めるかも知れない件について、どう思います?と聴いたら何て答えるのかなぁなんて不毛な事を思った。