&ハッピーターン

新宿のカフェにて、不意打ちで指輪を貰った。私の指には勿体ない、アレックス・モンローの、針金のように華奢なゴールドの蕾の。ほの暗い間接照明の中でもぴかぴかしているから、私の気持ちもつられてぴかぴかした。かつてはベタに指輪など…と思っていた筈なのに嬉くて、そんな自分に多少呆れて、でもやっぱりどうしようもなく嬉しかったからずっと眺めたり触れたりしていた。ちょっと泣いた。

同じ職場でほぼ毎日顔を見られたこれまでと違い、絵に描いたような遠距離恋愛が始まる。何気ない日常を共に味わう幸福を手放す代わりに、また得るものもあるだろう。

5月の雨の匂い、買ったばかりのカップリングベストアルバム、小城君のくれたブールドネージュ、遠い車道に響くエンジンの音、暖かな二の腕に付いた私の鼻水、綺麗なメモ、ハッピーターンの空袋、今お互いが感じていること。どうか忘れずにいて。
そして、どうか怒らないで。貴方のハッピーターンを全部食べてしまったこと。