もう二月

早いものだ。カウントダウンの終焉が、どんどん迫ってきている。嗚呼。
昨夜はリカちゃんがうちにやって来て、サークルの追い出しコンパ(明日)に着る洋服を試着し合った。深いえんじのワンピース、色違いの靴とコート。誰かと「お揃い」を身に纏うのなんて、一体いつ以来だろう。完全な自己満足の幸せの中で、二人してご満悦。

結局彼女は朝までこたつで眠り、私は会社の課題に取り組みながら深夜の教育テレビを見た。唐突に目に飛び込んだ《踊れども恋は実らず》のテロップに、気持ちずーん。それでもまあいい、とわざとらしい咳払いをして気を立て直す。
まだ寝ぼけ眼のリカちゃんが帰宅した後は、久々に一眼レフを持って家の周辺を歩いた。早朝の冷たさが脆弱な感性を研ぎ澄ませてくれる気がして、そう思うと寒さなんて苦じゃなかった。もくもくとした樹に張り付いた最後の葉っぱだとか、上品な着物を着てバスを待つ老婦人の後姿だとか、道端にうち捨てられた椅子に乗せられた誰かの帽子だとか、そういったもの達に向けて思うがままに幾度もシャッターをきった。その一回一回に、これをくれた人との思い出を込めるよう、大切に巻いた。
さて、凄く格好良く歩く男のひとが前を歩いていたので、こっそりとその影を撮った。本当は、真正面から「撮らせてください」と頼んでみたかった。あんなに姿勢が美しいのだから、きっと、まっすぐな人。…なんて乙女妄想はしない。
旧式のカメラがつつましやかにカシャ、と囁く度、心につかえた何かがこそげ落とされていくような、そんな感覚を覚えた。今日も晴れている。