煌々と闇を照らし

生憎、夜に光を撒くのは冴え冴えと凍る月ではなくて、ヴヴヴ…と無機質に唸る電子機械なのだけれど。


それなりに心待ちにしていた約束を反故にされて一瞬苛立ったけれど、そんなの自分だって同じだと思い至って、寸前でため息を飲み込んだ。いつでも逢える、と思うからどんどん後回しになってゆく。*1あとで、あとで、また今度ね…。そんな事してる間に大事な大事な相手は宇宙の彼方に飛んでいってしまうかも知れないのに。軌道を外れた人工衛星みたいに。でも、そういうの、振り回してる側は中々気付けないんだよね。
それでもやっぱりちょっとした腹立たしさとツンとした痛みの様なものが気持ちの澱になって、ぷつんと切れた電話の後でこたつ机に突っ伏した。来週は自分も全く同じ事をしようとしていたくせにさ、相手のそれは許せないなんて、なんて心の狭い女なんだろ。しかも変に良識派ぶっちゃって、楽しんできてね、だなんて。何処の優等生よ?くっそう。しかも嫌味なそれに「うん」とか言うなよ楽しげに!ばっかやろう。
すーはー
と深呼吸して、窓を開け放つ。キンと冷たい夜空にぼてっと落ちた金星が見えた。

*1: よく考えたらそれは、家族との距離感と同じなのだ。家族の様な関係を望んでいたのに、そうなったらなったで不満たらたらなんて何とも我儘ですなぁ。