窓に映る私はなんて情けない顔をしているの

電話をしてみたものの、相手の声を聴いてから、特に話すことなど無かった事を思い出した。電話は苦手だ。ただ吐息を聴きたいだけなのに、気配を感じていたいだけなのに、受話器越しの沈黙はそれを許してくれない。
暫くの機械音の後「やぁどうしたの?」と問われてどうしようも無くなってしまい、咄嗟に何でもないと言ってはみるものの、向こうの困惑が手に取るように解り居たたまれなくなってしまった。電波の向こうのあの人。その周りには極彩色の喧噪。世界のあちらとこちらにスイと線が引かれた気がして、夕闇に浸る部屋で独り口を引き結んだ。
いっそ切ってしまいたい。
でもまだ切りたくない。
きりり、と身体の奥がきしみを上げる。


いつか「思い出す」ことになるのだろうか、今日の気持ちも。
3年前同じ受話器越しに語り合った、青くて無邪気で希望に満ちた未来の話のように。