梅雨・トゥー・ユー

昨日はようやく梅雨らしい雨だと思っていたのに、今朝には窓から差し込む容赦のない陽射しに起こされ、参った。雨の日の用事は好きではないけれど、雨自体は嫌いじゃない。化粧や洋服やバッグの不都合さえ無ければ、私は今でも雨の中を好んで歩くだろう。勿論、傘などささず、髪も顔もぐっしょり濡れて降り注ぐ雨の中曇天の空を仰ごう。


金曜の夜。サークルの例会に顔を出したら、同回生が誰一人居なかった。若々しい面子の中、僅かな居心地の悪さを感じながら、隅の席に腰掛けて会の進行を眺める。3年前の梅雨の時期、私もこうしてここで仲間と語らっていた。2年前も。去年も。心から信頼を寄せる先輩は次々と卒業し、一緒に運営してきた同回生の姿はなく、私の居場所は少し不安定になった。
けれども、こうして移ろう時間の中で、ここが、この人たちが、いつか私の救いになるであろう事は、何となくわかる。今、どこか距離を置いて彼らを眺めてしまう自分をより遠くで見つめながら、怯えるな、と指を差す。元居た巣が変わってゆくことに怯えるな、未知の恐怖に怯え価値ある存在を捨ててはならない。

これまで、どれだけ多くのものを捨て去ってきただろう。小学生の私、中学生の私、高校生の私。長い時の中で忘れ去られる自分が怖くて、皆の意識に不自然に残る自分が怖くて、求めた時にもう必要ないよと云われる自分が怖くて、厭という程単なる保身の為だけに、大切に思っていた沢山の関係を無に還そうとしてきた。そして、(自分で望んでそうするくせに)そうしない人間を妬み、様々な糸の中心でいつまでも笑っていられる人間を羨んできたのだ――。
怯えるな。
少しだけれど大丈夫と思えるようになった。紡いだ糸はそんなに脆くは無いはず。それに、ほつれた糸は自分で直せばいい。


交差点に咲く紫陽花の隣で信号を待っていたら、向かいの道路に立つ人物と目が合った。
先日22歳の誕生日を迎えた、同じサークルで同回生の、リカちゃんだった。